宝珠物語


■ 『白珠の巫女』誕生物語

 『白珠の巫女』のWeb初登場の瞬間に立ち会ってくださったかたは、大学の友人のほかはこのサイトの常連さんでもまずいないでしょう。なにせこのお話、『花迷路』の中でも最古参のコンテンツなのです。これを書き始めた当時はトップページのデザインもたしか違ったし、迷宮放浪記も書き始めてませんし、イラストコーナーも予告しかなかった。ごく初期のリンク先くらいが、かろうじて当時から残ってるコンテンツでしょう。本のコーナーはあったけれど、当時の文章は残ってません。原形をとどめているのは『花迷路』ってサイト名くらいのものです。
 そもそも大学の情報処理実習をきっかけにつくりはじめた『花迷路』でしたけれど(もともとサイト立ち上げはしたかったので、単位ももらえて一石二鳥ってくらいのものでしたが)、自己紹介と読書コラム以外にコンテンツが思いつかなかったんですね。イラストは当時スキャナの使い方すらわからなかったですし。それで、「えーいWeb小説でも書いてやれ」と考えて、ほとんどその場でひねり出した設定が『白珠の巫女』の世界だったのです。……なんていいかげんな奴だ。
 実は当時、高校時代から書きつづけていた≪Century20≫シリーズも、アナログ環境で執筆中でした。だからそれを打ち込んでいけば良かったようなものなんです、が……。ちょっと飽きてたんです高都匡に(笑)いいかげんカタカナ名前でひらひらの衣装が着せられるファンタジーが書きたかったのです。緑とか紫の眼の人が書きたかったんですぅー。
 そういうわけで異世界ファンタジーに手をつけることにして、頭に浮かんだのが八色の宝珠に守られた国という世界設定。それぞれに宝珠の巫女がいて、その巫女に一人ずつ守護騎士がつく。国を守るという大任を背負った年若き巫女と、その人をあるじとさだめ全霊をかけて守り通す騎士。この組み合わせが八色ぶん八通り。もうこれだけでわくわくしてきませんか? 私はします(笑)
 さてこの世界設定の中で出てきたのが『白珠の巫女』の逆転カップルでした。「巫女」と来て男だったら意表をついて面白いなー、それなら騎士は女の子だよな、うーんじゃあどこもかしこも正反対の二人にしよう。そんな感じで、二人の設定が生まれました。なにもかも違う二人が出逢って、同じ秘密を共有して、そこに芽生えた強すぎるほどの「守りたい」という想い。そんなちょっと変った、でも純粋な恋物語を書こうと思ったのでした。
 ところでこの宝珠、べつにカラフルで楽しいから八色もあるわけではありません。(いえ、そーゆー理由もあるにはありますが)それぞれが一つの力を担って、フェデリアの平和を支えているのです。どの色がなにに対応しているのかを、宿舎の共用風呂でうんうん悩んでいた憶えがあります(何故風呂)。その中で白の宝珠の持つ力は「」です。そのことも私の頭の中では『白珠の巫女』のテーマの根幹として決まっていたりするのです。
 宝珠物語を八色全部書ける日が来るかどうかは判りませんが、フェデリアはいつのまにかずいぶんと愛着のある国になってしまいましたので、また新しい巫女と騎士を考えるのがいまから楽しみです。いえ、その前にクリスたちの話をきちんと書き進めないといけませんけれどね。今回なんとなく気の毒な立場のエドマンド君の救済なんかも、そのうちできればなと考えています。

2000.11.1

■ 名前の話

 私はなぜか、カタカナ名前を考えるときヨーロッパで実際に使われている名前を避けてしまう傾向があります。そういう名前(マイケルとかローラとかカールとかエリザベスとかetc)を使うとどうしてもその名前の持ち主のイメージがちらついてしまってキャラクターが作りにくいのですよ。あと、英語名とドイツ語名とスペイン語名とかが混じるのも変な感じだし……とか思って。それに、一から綺麗な語感の名前を組み立てる方が楽しいのですよね。
  でもこの『白珠の巫女』は逆に、あえて「既存の平凡な名前を使う」というルールを決めています。それも、英語名。なんというか「特別っぽさ」をこの話に限っては排除したかったのですよね。英語名前ってヨーロッパ系でも特にあっさりしているというか、飾り気がない印象がします。あと性別のイメージがほかの言語ほど強烈でない。男性名詞・女性名詞がない言葉だからかな? 主役二人とも性別を意識させにくい名前にしたかったんで、これは重要なのですよ。
  クリスという名前を使いたいというのも、英語名ルールにした理由になっているかもしれません。たった一人の女性騎士というキャラクターを考えたときに、「クリス」の名はぽんと出てきました。男でも女でもあり得る名前で、シンプルで、響きが良くて。とても気に入っています。ところで私はクリスというと「頑固じいさん孫3人」という十年くらい前にやっていたアメリカ製のドラマの長女を思い出します。この長女クリスがあるとき同じ名前の少年に出会って、「私、Kのクリスよ」「俺Chのクリス」って名乗り合うシーンがやたら印象に残っているのですよね。ちなみに『白珠の巫女』のクリスは「ChのChris」です。本名「クリスタル」が英語で「水晶」の意味だとすると綴りはKなんですが、まぁいいかと思って見目の好きな方使ってます。通称が「クリス」になる女名前ならクリスティーナあたりが一般的なのでしょうが、まあこのへんは趣味優先。(由貴香織里の昔の読み切りに「クリスタル」って女の子が出てきて綺麗な名前だな〜と頭に残ってたのでした)
  逆に難産だったのがエアリアスです。というか、実はいまだにこの名前は失敗だったと思っているのです。だってクリスと並べると語尾が両方「ス」になってどうにも具合が悪いのですよ。それに「エアリアス」って語感はどう考えても男名前じゃん!(笑)なーに考えてたんでしょうね。一応元のネタはイギリスの(?)空気の妖精「エアリエル」なのですが、なぜそのまま使わなかったんだ私。愛称の「エア」のほうはやわらかい感じが気に入ってます。ドイツ語かなんかで三人称の「彼」をこう言うらしく、そんな伏線もこっそり込めてます。ほとんど自己満足。綴りは「空気」そのままのAirですね。フルネームだとAireliasになるのかなー。なんか「アイレリアス」って読んじゃいそうだ。英語に詳しいかた綴りを考えてみてくださいまし。
  設定上では、彼の名前は元々ミドルネーム・ラストネームなし(というか本人憶えてない)の「エア」だけで、神殿側が付けた名前が「エアリアス・セシル・ラフィード」である……ということだったはずなのですが、うーんますます変ですね。まあ、現在エアの名前を呼ぶのはクリス一人なので問題ないということに……。
  脇役たちの名前はかなり適当です。エドマンドはたぶん、ナルニア国物語の次男坊の名前からかな。ユーリグは……ごめんなさい紫堂恭子さんの『癒しの葉』です。こんなに出番があるなら別の名前考えるんだった(笑)

2000.11.10

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