Century20 CARD ONE ―魔術師のいる街―


あとがき

シリーズ第二話。
とはいえ、カードは「1」ですし、物語はここから始まる、というつもりです。
この話は異常な難産で、何と執筆に足掛け4年かかりました。何度も何度もオープニングを書き直し、悩みまくってできたものです。だから愛着は深いかな。
高都匡という人物は、相当思い入れの深いキャラクターです。容姿、性格、物言い、すべて文月の趣味で作りあげてます。しかしこんなやつ普通主役に持ってこないよなあ(笑)。話の展開としては麻里亜がメインに来ないとおかしいのですが(いや、メインになってると思うけど)なんて出張りかたしてるんでしょこいつ。それはひとえに愛のなせるワザ(爆)。
あまりに長いこと付き合ったのでもうしばらく書きたくないような、でもまだまだ書きたりないような……。

(1999.6.2)


旧あとがき(自筆ノートより)


 やっと、終わりました。いやはや長かった。中身じゃなくて書いてた時間ですね。
 ほんとに終わったんだなー。春頃から「もう少しで終わる」を連発してたくせに、なんだか実感がないです。ああ、でも良かった年越ししなくて……(笑)

 奇しくも現在、作中と同じ季節なんですね。神無月。ということは、決定稿を書き始めてから丸X年……。その前に2パターンほど違うストーリーで書いているので、実質的にこれに何年かけてるのやら自分でも判らない始末です。最低でも3年はかかってるんだけどさ。初稿なんか主要3人のキャラしか同じじゃないよ……。桜の季節の学園モノでした。
 そのころは麻里亜もこんな不幸な人じゃなかったのになあ。時間のかかったぶんどんどん不幸が増えてしまいました。すまん麻里亜、一応(笑)ヒロインなのに。
 でも一番おそろしいのは、この話の副題がCARD ONEだってことですな。あと20話も書く気ないよ、私。

 「CARD ONE 魔術師のいる街」というのは、もちろんタロットカードの1番、Magicianになぞらえたもの。この魔術師は当然高都匡のことです。マジシャン、には手品師とか奇術師、魔法使い、くらいの意味があるけど全部が匡の属性ですね。カードの意味としては器用さとか頭の良さ、あと「始まり」というのがあったと思います。トリック、ってのもあるかな。
 ほかのキャラクターもカードになぞらえるとしたら、麻里亜が「女教皇」、朔は「力」か「戦車」かな。栞はラストにして最高のカード「世界」です。ははは、ひいき入ってるな。
 そういうわけで、もしカード2を書くならそれは麻里亜の話になるんでしょうが(って今回も表向き麻里亜の話だったんだが)それより一気にカード6まで飛ばして書いちゃいたいなあ。番外編で匡と栞の昔話ね。なんたってNo.6は「恋人たち」ですから。……え? もう一組? やだよ(笑)いや冗談でなく、匡と栞のシーンだとかなりくさい台詞も平気なんですが、ラストのほうで朔&麻里亜を書いてるときめちゃくちゃ恥ずかしくてたまんなかったんですよ。なんでかなあ。匡と栞だと見た目レズだからかな(おいこら)。

 各キャラクターについてよもやま話。
 まず「裏の主役」高都匡ですが。普通、このタイプって主役はらないんだよね。良くてナンバー2。それがこうまで優遇されてるのは、ひとえに作者の愛のなせるワザです。好きなんですよ、美人でクールで頭良くて言動謎な男。
 それでも一応、シリーズ始めたときは「“めちゃくちゃいい男”を書こう!」とか思ってたはずなんですが……そのころ描いた匡&朔のイラストは「泣かせた女は数知れず」とかコピーが付いてた(そして友人に怒られた)りしたんですが……駄目じゃんこの男。良くなさすぎ。イヤ私は愛してるけどね? でもショール羽織るのはやめてくれ頼むから。
 その匡の、「相棒」として出てるのが瀬能朔。
 最初は、悪いけどほとんど思い入れのないキャラでした、主役がああいう男なんで、こっちは「まともな一般受け」にしとこうかという程度で出来てしまったんですね。あと、匡がどう考えてもボケなんでツッコミをさせねばと(笑)
 しかしこのごろ、「ひょっとしてこいつ凄く格好良いのでは?」と思い始めてます。自分で書いといてなに言うかって感じですが、成長してます、マジで。昔はもっとお子さまだったのにねえ、お母さんは嬉しいよ。しみじみ。
 あとこれはわざとセオリーを崩してる設定なんですが、匡と朔の力関係は対ではありません。バトルの場面(よく考えたら今回の一番まともなバトルってこいつらの喧嘩だ……いいんだろうか)でも言ってることなんですが、あくまでも匡が上位。現時点で百回闘っても結果は変わりませんね。持ってる力も経験も知恵も違いすぎるわけだから、これは当然のことです。前回の話なんか、朔がさんざ苦戦してるのに匡が本気出したら3行で終わったもんなあ。朔には気の毒ですが、頑張れよとしか言えませんねー。
お次は今回の(一応)ヒロイン、真田麻里亜嬢について。実は彼女は私にとって鬼門というか、一番よく判らない子で……もう、めちゃめちゃ苦労しましたよ。なにせ自殺寸前まで追い込まなきゃいけないっていうのに、なかなかシンクロできなくて、しかも気がついたら今度はどうやって立ち直ったらいいんだか悩まされてしまうという。まあそのおかげで妙に朔が積極的になってくれましたが(笑)……当初はこの話はあくまで「出逢う」だけだったのよね、この二人は。
 ラスト、栞。はっきり言ってひいきしてます、前にも書いたけど。実際、登場する必要は殆どなかったんですよね。でもどうしても“匡の永遠の恋人”の存在を出したくて。
 アルヴィノで虚弱で目が見えないうえに匡のほかには天涯孤独、という、見ようによっては麻里亜以上に不幸せな環境なんですが、それでも栞を書くときに(以下空白)
 補足
 ……それでも栞を書くときに抱いているイメージは幸せな微笑みを浮かべた彼女です。世界中から追われても、匡の隣にいられるだけで栞はすべての現実を果てしなく肯定できてしまうんですね。だからいつも幸せ。

平成十年神無月某日


尻切れトンボで申し訳ありませんが、二十歳の文月が作品を書き上げた勢いで書き殴ったあとがき、少しはお楽しみいただけたなら、幸いです。

もくじへ